あぶく

たまたま朝日新聞の夕刊を見ていたら、「振付コンペが新展開」と題してソロ×デュオとトヨタが取り上げられていた(長友佐波子氏の記事)。ソロ×デュオは参加資格を「アジア(の人)」とはっきり謳い、横浜ダンスコレクションには欧米などから制作者が来日することになっているし、トヨタも今年から「日本を活動拠点にしている人」と参加資格を限定しつつ、審査員は国際的に活躍するプロデューサーが中心になっている。トヨタの方は色々と話を聞いているから、結局は日本のダンスを海外に輸出したいという算段であることはわかっていたが、それと横浜の動向を結びつけて考えてみたことはなかった。鋭い。これがジャーナリズムの視点なのだ。「『アジアのコンテンポラリーダンスは欧米で需要があるが、まとめて見る場がなかった。アジアの核として、世界中からバイヤーが買い付けに来るダンス市場に育てたい』と、主催する横浜市芸術文化振興財団の石川洵エグゼクティブディレクターは意気込む」。「『審査員は国内外の制作者。その目に触れることで地方や海外での公演につながる』と、提携する世田谷パブリックシアターの楫屋一之プロデューサー」とそれぞれをめぐる談話が出ている。ローカルなものがグローバル市場と直結してしまうというのは、おそらく演劇にはあまり見られないダンス特有の事情だと思う。ぼくは『エルマガジン』11月号の黒田育世の前パブでトヨタアワードに触れた時に、「もっとも企業と公共ホールの提携事業ゆえ、『国際的』な審査員の面々、副賞として海外公演資金を援助、等々、『無法地帯からスターを出して海外輸出』という市場戦略のシナリオはチラつく。日本のダンスの植民地化とまではいうまいが、やはりコンペである以上、ルールなきところに新しいルール(=権威)を知らず知らず立ち上げてしまう危険は無視できない」と書いた。もちろん何か結果が出てみないことには何ともいいようがないわけではあるが、小規模ながらダンスが「バブル」みたいになってるのは確かだと思う。