荷造りすると、いつも服をたくさん詰め込みすぎてしまう。要るのか要らないのか、いくら考えても答えが出ない。いつも大きめのショルダーバッグ一個で済ませるのだが、今回はヴィデオテープやCD−ROMなど資料が入っていて、その分の体積はどうやっても動かせない。
いま最後まで迷っているのが、持っていく本だ。本は基本的に重い上に、読んでしまったページは端から単なるお荷物に変貌していくため「嵩張り」感にかけては比類ない物体といえる。すでに Lonely Planet のガイドブック(厚すぎるので置いていきたい候補1位)、先月の Lens のレヴューを書く資料としてデリダ『火ここになき灰』(読み終わってるのでこれもホントは置いていきたい、っていうか〆切過ぎてる)、去年出たポストモダンダンスの論集(読みかけなので半分くらいは不要)。あとこの他に純粋な読書のための日本語の本がほしい。ふだんとは違う環境と精神状態で、どのような読書が快適かつ有益かということは熟考に値する。日本語への純粋な欲求が高まるに決まっているので、暇な時間がたくさんできるからといって普段なかなか読めないような面倒な本を選ぶと必ず損をする。蓮實重彦『スポーツ批評宣言』のような軽快で笑える本がいいが、これは読み終わってしまって、後悔している。この前買った前田英樹『絵画の二十世紀』の、穏やかで刺激にも富む文体か。少し読みかけだがゴリゴリしていて明晰な岩井克人貨幣論』か。適当に新書をニ、三冊持っていってバンバン読み散らかすという手もないことはないが、よく知らない著者の本を持っていくのはやはり冒険だ。旅先でダメな文体に付き合わされるはめになると、元気が吸い取られる。迷う。まだ決められない。