2004年のダンス・ベスト5その他

2004年に見たダンス*1は、公演数で192、作品数にすると398。たぶん去年より減ったが、見るべきと思うものはだいたい押さえている。ただバレエをほとんど見れなかったのと、比較的メジャーなところで伊藤キム『花の歴史』、木佐貫邦子、H・アール・カオス、コンドルズ、水と油、ギエムのマリファント、マシュー・ボーン関係を見ていない。その上でまずベスト5。
●1位ほうほう堂『るる ざざ』(10月、STスポット、「ラボセレクション2004」)
●2位チェルフィッチュ『三月の5日間』(2月、スフィアメックス)
●3位白井剛『質量, slide, & .』(11月、シアタートラム)
●4位大橋可也&ダンサーズ『あなたがここにいてほしい』(1月、STスポット、「ラボ20」)
●5位ニブロールドライフラワー(2月、パークタワーホール)
ほうほう堂は「ソロ×デュオ」における『北北東に進む方法(2004)』も捨てがたいが、常識的な完成度ではなく方法論の新しさを重視してこちらをベスト1に選ぶ。2は演劇への悪意が結果的にダンスを立ち上げてしまったもの。「再現」からも「現前」からも距離をとった未知の身体表現。3の白井剛は固有の問題意識への執着から自前の技術体系を生み出しているところが感動的だった。舞台上で起こることの全てを作り手が把握できてしまっているという不満(贅沢な)はある。4は、ただ剥き出しの空間に何の変哲もない物があり体があるだけでここまで行ってしまっていることに率直に驚く。シュールレアル(超現実)。ただし今のところ方法論的な意識があるのかないのかわからず半信半疑という部分も。ニブロールは今年劇的に新しいものを打ち出したわけではないが、ともかく止まらずに変化し続けていて、存在として眩しすぎる。トヨタアワードにおける『ノート』や、『NOTES』も迫力があった。

以下、次点(上演順)。
黒沢美香&ダンサーズ『jazzzz-dance』(5月、シアター・バビロンの流れのほとりにて)、枇杷系『愛情十八番』(6月、シアタートラム)、yummy dance『kNewman』(8月、パークタワーホール、「We Love Dance Festival/ユーモア・イン・ダンス 東西バトル編」)、身体表現サークル『広島回転人間』(8月、パークタワーホール、「We Love Dance Festival/ユーモア・イン・ダンス 東西バトル編」」)、地点『じゃぐちをひねればみずはでる』(9月、こまばアゴラ劇場)、Co.山田うん『ワン◆ピース』(12月、スフィアメックス)。
今年の黒沢美香は旧作の再演が多かった。評判の良い6月BankARTにおける『ロマンチックナイト』を見逃してしまったのが痛い。枇杷系は天野由起子、加藤奈緒子、尹明希による冒頭トリオ部分。「カンパニー」というより「ダンサー集団」か。yummy dance は小さい人々が作る大きな空間の味。身体表現サークルは無限の可能性を秘めている。パークタワーのは田中泯『脱臼童體』のラストを思い出しながら見ていた。地点については正直よくわからない。欧米には似たようなのがありそうな気もしてしまい、説得力の点でいま一歩。山田うんはヴォキャブラリーの嵐に圧倒された。構成にももっと積極的なコンセプトが欲しい。

以下特に印象に残った人など。
●ダンサー加藤奈緒枇杷系『愛情十八番』)。独特である。
●照明デザインジョン・モンロー(ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス『Amelia』(6月、さいたま芸術劇場))。ダンスより照明が面白かった。
●音楽・音響スカンク(大橋可也&ダンサーズ『あなたがここにいてほしい』(1月、スフィアメックス))。主張のある音。
●企画「Dance Seed 2004」(5〜7月、ブリックワン)。アイディアを競うのではなくあくまで自分の体との向き合い方を問う姿勢。
●2005年に強く期待岡田智代金森穣/Noism 05北村成美金魚×10黒田育世/BATIKフォーサイス・カンパニー

*1:というか身体表現。完全に「演劇」なものや古典芸能を含み、ワークショップのショーイングなどは除外。遅刻・中途脱出したものも若干あり。