止まってる?

渋谷で黒沢美香を見る。良かったが、明らかに自分の眼が「江原朋子以後」にシフトしてしまってもいた。素直に見れない。隙あらばシラけてしまう。ちなみに府中市美術館で丹野賢一を見た時も、眼が「白井剛以後」にシフトしてしまっていた。別にそれぞれ二者の間に優劣を見ているわけではないのだが…これって不純なのか。
終演後、最近調子こいている制作者N・Aと飲み食いしながら色々イジメられる。何言ってるかよくわからなかったけど。こっちの返事もワケわからなくなってたけど。ただ「最近保守的」って言われたのは我が意を得たりだ。凡庸な革新などよりは、ウルトラ保守だ。
渋谷へ来る途中に探し物があってブックファーストへ行こうとしたが、気が変わって表参道のABCへ行ったら全然ものがなくて目的達せられず。再開を機に棚構成が変わったようだ。でも珍しく今はお金持ってるので、まずゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』('00、講談社学術文庫)[amazon]買う。そして上野俊哉の新著『アーバン・トライバル・スタディーズ パーティ、クラブ文化の社会学』('05、月曜社)[amazon]。これは本格的なダンス論。ダンスが内容なき伝達(コミュニケーション)、「目的なき手段」だとすると、その本質は手段=メディアの共有、すなわち模倣(他人を真似ること)だということになるわけだけど、その話が正面から精緻に扱われている。こういうのは独創性を奉ずる芸術理論からも、同一性よりも差異や個性を重んじる倫理学からも、なかなか出て来にくい種類の議論だろう。「模倣(ミメーシス)は何よりもパフォーマティヴな行為、身ぶりである。しかも社会関係においても文化現象においても、模倣にはっきりとモデルがあるとはかぎらない。何が究極の、あるいは理想のモデルなのかがわからないまま、模倣は部分的な類似の結合や生産として進行することができるからである」(195頁)。あと細川周平『サッカー狂い 時間・球体・ゴール』('01/'87、哲学書房)[amazon]。細川さんにこんな著書があるとは知らなかった。