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昼頃から校正をして、発送して、あとはずっと岡田利規『三月の5日間』('05、白水社)を読んで過ごす*1。なかなか読めずにいたのでここぞとばかりに一気読み。『三月』→『マリファナ』→『労苦』の順で。あと先日、遅ればせながら斉藤斎藤『渡辺のわたし』('04、BookPark)も入手して読んでいる。
どういう経緯で買ったのかもう忘れるくらい前に買って何度か聞いてもあまりピンと来なかったBilly Cobham 『Shabazz』[amazon]をまたかけてみたらいきなりキた。
立ち上がるレッサーパンダ程度のものに世間の関心が思いのほか持続している事実に何か意味ありげなものを感じる。クマだって立つしプレーリードッグはもっと凄いのだが、そういうことは別にして、人間が自然に対して驚くパターンとしてまず「自然の驚異」というか「神秘」みたいなのがあり、派手派手な真っ黄色のカエル、とか、サンゴの産卵、とかだが、もっと特殊なパターンとして「人間との類似に驚く」というのがあって、今回のレッサーパンダはまさにこれだ。他の例としては、道路に木の実を置いて自動車に殻を割らせるカラス、とか、サメに襲われそうになっている人間を救ったイルカ、とか、動物が意想外の知能を示すような場合が挙げられる。レッサーパンダが二足歩行したことがどうして人々の耳目を集めるかというと、一方には動物を擬人化したがるファンタジーが満たされたということもあろうが、それ以上に何か根深い不安のようなものがあるに違いない。二足歩行をすれば、前足が自由になり、道具を使うようになるのではないか。道具を使い始めれば、ボケ防止みたいに、知能が発達し、いずれ人間の一人勝ち状態の覇権を脅かすのではないか。超音波で会話するイルカや、蟻塚に棒を突っ込んで蟻をとっているサルなどの姿が刺激する人間的好奇心の根には何かそういう不安があると思う。

*1:月末に向けて明らかに油断しているのには気づいている。