豆腐

久しぶりに散々のた打ち回って原稿を上げた。今回は来月の『スタジオボイス』に載る MIKUNI YANAIHARA Project『3年2組』の前パブ。だいたい舞台の前パブというのは文字通り「プレヴュー」であって、まだ見てないものについてあれこれ書くことになる。映画の記事を書く人は試写会を見ているのだし、CDや本の人は見本をもらっている。それは結局「レヴュー」ではないか。ずるいのではないか。それにそうやって「プレヴュー」という形で実質的には「レヴュー」が流通するのも、売り手側には美味しい。しかも一種の宣伝だから悪いことは書かれない。複製芸術は売り出される前から二歩も三歩も先回りしている。今回なんて、どうしようかと思って、「言語起源論」かと思いつき、ヴィーコからヘルダー、ルソーにコンディヤックアリストテレスカッシーラーフンボルト、ピエール・ルジャンドルまで積み上げてとりあえず始めてみたものの、結局面白く短くまとまらないのでその部分は全部捨てて、最初にモヤモヤあった考えを自力で言語化することにしてみた。無意味な回り道だったわけではなく、回り道をしたおかげでそれなりに的を絞れたのだと思うけれども、はじめからダイレクトに的を狙えたらどんなに楽だったかと思う。脱稿した後にはいつも膨大な量の、使わなかった文章の切れっ端、あるいは削りカスみたいなのが残るので、本文だけワードからテクストファイルにコピーして保存した後、それらをバサッとゴミ箱に捨ててやるのがいい気分である。
何度も文章をいじっていて思うように書けているのかいないのか自分でもわからなくなり、改めて客観的に読んでみたい時は、休んだり気分転換するよりも他人の文章を読むと脳に素早くリセットがかかるということを発見した。