昨日に引き続きイメージフォーラム・フェス。ダンス映像2プログラムのうち、Oプログラムのジネット・ローランのはありがちな「意味ありげ」系「アートフィルム」風、ピナ・バウシュのはトルコ制作のドキュメンタリーだが稽古風景と実際の舞台を行ったり来たりするだけで何の芸もない(これを「ミニマル」などとは言うまい)素人仕事。調べたら本当に学生が作ったものらしい。しかしNプログラムのマリー・シュイナールとラララ・ヒューマン・ステップスは志からして全く異次元、鳥肌が立つ映像/ダンス体験だった。ラララの方はおそらく前回来日時にカナダ大使館で上映されたもので、たぶんNHKでも放送しているのだが、本当によく考えられている。舞台同様ちょっと長く感じはするものの、ダンスとカメラが緻密に絡み合って驚異的な出来。エドゥアール・ロックはこんな映像作品まで作ってしまって凄い。マリー・シュイナールも自分で監督をしていて、これもまたシンプルながらシュイナールのダンスに対する思想が見事に映像化されていた。見た目面白い作品を作るのでかえってアイディア勝負の人と受け取られがちだが、この人は深いなと思った。人と人の関係なんて、結局、動く、それを見る、反応する、だけなのであって、何かが「伝わる」わけじゃない。そこまで言い切ってしまいかねない、暗澹たる諦念が快活な割り切りへと裏返るところに、シュイナールの暴力的なまでのエロティシズムの根拠がある。そしてダンスがもしコミュニケーションなんかであり得るとすれば、これだよなと思う。誰かが動く。誰かが見る。誰かが何か言う。誰かがそれを聞いている。閉ざされ合いながら隣り合うものどもの無内容な交流、「客観的」な関係。
用事を済ませたりしながら駒場へ、古本屋へ寄ったらTさんに会ってお茶する。シュイナールの『春の祭典』の凄さなど。劇場へ向かって歩いたら別のTさんにも会った。会場では色々な人と久しぶりに顔を合わせる。まことクラヴは最初の『部活動報告会 vol.1』からはずいぶん遠くへ来てしまった。