一週間ほどクイーンズのM宅に居候していて、今日ブルックリンへ越してきた。クイーンズは物価が安くて、親しみ易い下町の雰囲気だったが、パークスロープは郊外の閑静な住宅地という雰囲気で、街路樹の緑が濃くて道も静かだし、とにかく美しい街並。
今週はリンカーン・センター・フェスで連日舞台を見た。金曜はオン・ケンセンの『ゲイシャ』。五月に東京でリハの打ち上げにだけ参加したことがあったので、出演者の皆さんとも再会。ニブロール矢内原充志が衣装で参加していて、舞台後に色々話を聞いた。オン・ケンセンの創作プロセスは、テーマをもとに参加者がそれぞれ自分でアイディアを出した上でそれをまとめて行くというものらしく、充志くんは「ケンカしなくても一緒にものが作れるってことが大発見だった」と言っていて、ウケた。土曜はハイナー・ゲッベルスの作ったシアターピース。弦四(モンドリアンSQ)、俳優一人、ロボット、リアルタイムのヴィデオ中継などを、カネッティのテクストに絡めて、今日の社会や都市についてコメントを加えていくというもので、舞台上から客席へ降りた俳優をヴィデオが追いかけ、そのまま建物の外へ出て車に乗り込み、どこかの建物の中にある自室まで行ってしまうところがスクリーンに映し出されつつ、その様子が舞台上の演奏とシンクロしていたりする。自分と俳優との間のフィジカルな距離が、ゴムのようにどこまでも伸び、それによってNYという街と自分の身体とを強烈に感じることができた。最後のどんでん返しに至るまで、ほとんどパーフェクトといっていい出来で、つい「別に新しいアイディアはないんだけどな」と思ってしまう自分が情けなくなる。日曜はタイのアーティストやダンサー、ロック・バンドなどが寄ってたかって作った「オペラ」。内容はともかくプロダクション自体にすごく勢いがあり、関っている人々の集団的な熱気を感じた。こういう「勢い」のある舞台というのはごく稀に行き当たるものだが、とりあえず良い。思いがけないところで生アート・リンゼイも聴けた(衣装までつけて現れる)。