印度

今日もシアター・バビロン。客席には昨日よりずっと多くの知人や顔見知りがおり、そして舞台はやはり良かったのだった。ところで昨日は黒沢美香のインド舞踊(のフェイク)を見ることができ、そのことが頭にあったわけではないが、今日の昼は昔買ったシンガポール製のヴィデオCD(というメディアがかつてあった)で『ムトゥ 踊るマハラジャ』のダンスシーンを見たりしていて、すると今日の舞台でも、特段インド音楽が流れたわけでもないのに黒沢美香が首を左右にカクカク動かしていた。確か今年初めだか去年の暮れあたりに黒沢美香は室伏鴻、川口隆夫と一緒にインド公演をしていたから、その流れではなかろうか。
どうして古いヴィデオCDを引っ張り出したかというと、再生専用のDVDプレイヤーをゲットしてこれを色々試してみたかったからで、改めてインド映画はいいなと思った。楽しく、無邪気で、感動する。日本では『ムトゥ』がブレイクしてからしばらくは公開が相次ぎ、当時ぼくはずいぶん入れ込んで見ていた。『シャー・ルク・カーンのDDLJ/ラブゲット大作戦』とか『アルナーチャラム 踊るスーパースター』とか『インドの仕置人』とか『ボンベイ to ナゴヤ』なんてのもあった。まあ今からすればまさに一過性のブームだったが、やはり話はくだらない上にワンパターンで作りも粗雑でありながら無駄に長いのだから、ご当地の映画文化のコンテクストから切り離してソフト化し輸出するには無理があった。もちろん最大の罪は、質の低い作品を適当に買いつけていい加減な宣伝を打って便乗しようとした連中にあるとはいえ、そもそもが他の国の映画とはまったく違う性質のものだったのだ。何といっても楽しいのはミュージカルシーンだけれども、それを楽しむには膨大な無駄を大らかに(?)受け入れる姿勢が必要なのだろう。ミュージカルシーンだけ抜粋してあるヴィデオCDなども買ってみたが、全体を見たこともなく筋書きもわからない映画の歌や踊りだけ見てもダメだった。
ラジニカーントやミーナの踊りや群舞を見ていて、先日NHKで見たローラン・プティの『ピンク・フロイド・バレエ』を思い出した。上演そのものはどうしようもなく、マリ=アニエス・ジロの巨体もひたすらグロテスクだったが、何といってもあの極限まで無邪気でおバカな振りが楽しく、痛快で、一種インド映画と通じるところがあるのだ。いわゆる「ダサい」系統に属するであろうベタな動きをマジかつ全力でやると、それは正当化できてしまうどころか、手の込んだコジャレた動きよりもダイレクトな感動を呼ぶことがある。そこには「ダサさ」という反価値の本質が何か隠れているように思う。要するに「気取ってない」ということか。
あと、DVDプレイヤーのおかげで、ずっと前に韓国の留学生のSさんからもらったヴィデオCDをついに見ることができた。これはSさんがモンゴルへ行った時に現地で買ってきてくれたお土産で、Mongolian National Folk and Danse と書いてある。Danse はもちろん Dance の間違いで、National Folk というのも難解な表現だが、とにかくPCのドライヴでは再生できず、中身を見れずにいたのだった。結果、ヴィデオを何回もダビングしたような画質で、民族系の衣装を着た地味な男性歌手が歌うPVのようなものが見れた。スキップできないのでまだ最後まで見ていないが、ダンスは出てくるのだろうか。パッケージはキリル文字モンゴル文字なので何もわからない。