第十二日

部屋を移らねばならず、荷物も自力で移動。全部持って4階から降りてきて、別棟のユースの奥の荷物置き場へ突っ込む。ユースは昔ベルリンで何泊かしたことがあるが、設備がどうこうじゃなく、とりあえずバックパッカーが人種的に受け付けない。朝食のチケットを持って隣のカフェに行く。パンとかシリアルとかコーヒーとかジュースが、ペコンペコンのプラスチック食器でもらえる。浮き足立ったヤングたちが醸し出す苦手な雰囲気に自分からハマり込み、つげ義春みたいな自虐的な気分に浸ってみたりするのも……いつも行くネットカフェに開店と同時に入り、耳栓をしてとりあえず昼過ぎまで原稿を書く。ここのメインの店員は二十歳くらいの韓国系の若者で、彼とはもう顔馴染みになっている。何しろほとんど毎日来ているし、最近は朝から夜までいるのだから、小銭がないとまけてくれたりもする。ここは特に安いというわけではないが、日本語がちゃんと使える。フォントぐらいはどこの店も入れているが、ワードと辞書を入れている店は案外ないのだ。ナターシャやコンスタンツェからメールの返事が来ていた。コンスタンツェのメールは相変わらずシニカルでトンがった文体だが、ところどころ綴りがドイツ語みたいになっている。これからアラン・プラテルを見に行くらしい。昼はまた Charlie's に行く。ロンプラに書いてある通りダブリンの物価は高めで、こんなファーストフード(北京鴨+ライス)でも15ユーロくらい軽く取られてしまう。また戻って、本当に夜までかかり、閉店間際に一応脱稿して送信。倉庫から荷物を出して新しい部屋へ入る。やはりサンルーフで明るいが、壁に窓がない。明日は早起きして Howth に行ってみることにする。