サム・ライミ

スパイダーマン』を見た。サム・ライミはメジャー路線で新境地を開拓しているようでいて、最近のはどれもあまり面白くない。チープなビルドゥングス・ロマン仕立ての出だしは馬鹿馬鹿しくて面白いのだけど、その後は無理に詰め込んだアメコミ風のプロットをスピーディにやっつけるだけで精一杯だ。人物同士の関係がけっこう複雑というか微妙な設定になっているのに、誰が誰にどんな感情を抱いてるのかよくわからないまま定番の図式になだれ込んでしまう。主人公がなぜか叔父と叔母のところで暮らしていたり、友だちも隣の女の子も父親しかいなかったり、色々ありそうに臭わせておいてほったらかし。地元とNYの間がどのくらい離れてるのかも曖昧だし、敵役のゴブリンは誰に何の恨みがあるのかはっきりしない。スパイダーマンに対する市民の心情描写もいい加減なので「影のあるヒーロー」っぽさが全く出てない。基本的には『ダークマン』だし、あるいは『キャプテン・スーパーマーケット』でもいいのだが、「自分の能力に驚きつつ暴れる」キャラが冗談になってなくて、かといって『バットマン』や『ザ・フライ』みたいな暗さもなく、しかしこの両方に手を出してどっちもコケてるように見える。CGがショボいのとか、編集がしばしば杜撰なのは何か狙ってるのだろうか。
ところで以前『バッカス』にレヴューを書いたシェン・ウェイ・ダンス・アーツが、今年のダンス・アンブレラに出るらしい。ダンス・アンブレラは先日トヨタで来ていたヴァル・ボーン女史が芸術監督をしているイギリスのフェスで、ニューズレターを見る限りシェン・ウェイは今年の目玉という位置づけのようだ。流石。黒田育世は裏表紙に出ていて、ボーン女史は「私にとって面白いか面白くないか、規準はそれだけだ。そして『SIDE B』は面白かった」と書いていた。シェン・ウェイのカンパニーはやや大所帯だから今の日本の状況ではなかなか呼べないだろうけど、クラウド・ゲートとかモンテカルロとか呼ぶお金があるならシェン・ウェイを呼ぶべきだ。日本にもこういう、芸術監督にプログラムを一任した大きなダンス・フェスがほしい。
今日は良い仕事をした。というか以前のある仕事の結果が出て、それが良い内容で嬉しかった。