ぐわし

先月号の『ユリイカ』特集・楳図かずお、全部読む。
岡崎乾二郎そのつどの感覚に忠実に、事の後先を忘れて集中するというのが「子供」の特徴ですね。人生の目的なんか考えない。でも、そういう子供らしい感覚を受け入れる、肯定するということは、当の子供でもむずかしいんですね、実際の子供は得てして一生懸命大人になろうとしているから。「何のために」なんて小賢しく行く末を考えずに「僕は子供だー」とまことちゃんみたいに絶対的に肯定するというのは大変で。僕は『まことちゃん』で子供になることができた(笑)。ほんとははじめから子供だったはずだけど、現実的には改めてそれを発見して、やっと子供であることに止まることができたんですね」(36頁)。今の大人が「止ま」ろうとしている「子供」とは、「一生懸命大人になろうとしている」子供のことじゃない。つまりリアルな「子供」のことじゃなく、もっと理念的な存在だ。「低成長」「反成長」における理念……理念なのか?
楳図かずおそこを子供はちゃんと本能的にわかっていて、「これを出すと大人はへこむぞ」というのを知っているんですよね。〔・・・〕電車の中で目撃したんですが、まだ喋るちょっと前ぐらいの小さい子供がお父さんとお母さんといて、鼻に指突っ込んでモゴモゴモゴモゴやっているんです。お父さんとお母さんは無視しているんです。ところが、前の座席に僕が座っていて、それを見ちゃったんですね。それでちょっと口元がニタっとなった瞬間にその子、勢いづいちゃって、舐めるわお父さんホレホレって見せるわで(笑)」(37頁)。楳図かずおと子供の特殊な共犯関係。普通の「大人」はそんなの見て「ちょっと口元がニタっと」なったりしない。