薄っ!

タイニイアリスでゴキブリコンビナート見る。靖国神社見世物小屋しか見たことなくて、本公演はこれが初。何より劇団の謳い文句と、あと『CUT IN』に連載されてる「Dr.エクアドルのロマンティック汚れモード」、特に最近目立つ気がする「アンチ保守文化」的な論調を見ていると、何とも薄いなあと思われて、見なくても想像ついてしまうのだが、やはり一度は見ておこうと思って見て、ほぼ予想が正しかったことを確認して帰って来た。グロテスクなものをただ見せているだけで、ディテールがない。変な液体が噴き出るにしたって、噴き出すタイミングがキマらないと面白くも何ともないんだけど……。福島瑞穂をレイプの対象に選びたがるところなんかも妙に古臭い。70年代?
と思ったら『CUT IN』最新号でも、「舞踏ファンで芸術嫌い、バレエ嫌いの私の視点によれば。」と題して「コンテンポラリーってやつ」への嫌悪を吐露しているのだけど、結局のところ彼の不満の種は「舞踏と呼ばれる土着的で貧乏くさいダンスの凋落とコンテンポラリーの台頭」と要約できてしまうようで、要するに「趣味」のレヴェルでしか物事をとらえていない感じだ。露悪趣味もこだわれば楽しめるものになるのだけど、今どき露悪趣味“だけ”で盛り上がれると思っている節があり、その辺もちょっと時間が止まってる気がする。というか80年代のバブル=ポストモダンを通過せずに70年代にダイレクトに先祖返りしているように思える。もしかしたら、エクアドル氏は年齢的にはリアルにオッサンなのではなく、案外若いのではないか。「若者が歴史*1に逃避する」動向は、舞踏系ではそんなに珍しくないと踏んでいる。
三木成夫『胎児の世界』読了。第三章はやっぱりエコロジーだったが、世界観が独特で面白かった。パッと見はありがちなドイツ・ロマン主義風の誇大妄想なのだが、それを裏打ちする論理に「そうかも」と思わせるだけのものがある。たまたま手元にあった『セゾン・アートプログラム・ジャーナル』9号が三木成夫特集なので、これも読んでみよう。

*1:えてして家父長制的だったり、要するに価値観がハッキリした世界。いうまでもないことだけどゴキコンは反道徳を強く掲げることで道徳の方も否定的に定義している。