先延ばし

タスクに追われていると、別に今やらなくてもいいようなことを次から次へと意欲的に思いつく。それらのアイディアは、別に今やらなくてもいいが、いずれやっても悪くはないし、どちらかといえばやるべきであるようなことだったりするので、タスクから逃避する言い訳としての資質を姑息にも備えているわけだ。小さいことなら実際にやってしまってもまあいい。例えば、キーボードのキーの隙間を掃除するとか。これはずっと前に発見したのだが、キーの隙間というのは想像をはるかに超える量の綿埃などが入っている。ぼくのキーボードはもう8年くらい使っているから*1、初めて掃除した時は衝撃だった。一個一個のキーのこのプラスティックの裏側に入り込んでいるらしく、隙間に細い針金か何かを突っ込んでガシャガシャ動かすとたちまち、まるで綿飴の如くどんどんふくらんでくる。そこで今日は、キーボードを分解してもっと徹底的に清掃してやろうと考えつき、ネジを外しにかかったのだが、開けてみれば結局はキーの直下の空間まで到達することはできず、しかも一回閉めたら端っこの方のキーが効かなくなっていたりして、何度もやり直しているうちに時間だけが過ぎていった。こんな風に逃避しても何も解決しないのだが、それでもなお「いや、気分転換をした」などと自分で言い訳してしまう。
他には、月曜の「はぎ子別館」の時にいくつも置いてあった赤いスタンドを見て、The Cinematic Orchestra のアルバム『Everyday』の裏ジャケを思い出し、それと『Motion』を両方通して聞いてみて、やっぱり『Motion』の方がカッコよく、しかも「映画音楽的」としかいいようのない音楽的レトリックに満ち満ちていることを確認したり、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『Acme』と『Orange』を聞き比べてみて、やっぱり『Acme』は結構カッコいいと思うけどぼくには『Orange』の何がいいのかわからなくて悔しいことを確認したりした。
こうやってグダグダしながらタスク終了にじわじわ近づきつつ、突然Ginot/Michel『La Danse au XXe Siecle』の翻訳の続きがやりたくなり、じゃあ今やってるのが終わったらやってみよう、と思って我慢して、そしていざとなったらそれほどやりたくなくなっていたものの、普段とは少し違うあの心理状態においては確かに「やりたい、やるべき」と思われていたのだからという理由で、今度は自らに強いて作業を再開してみた。今日は映画を見なかったというだけでも、自分を褒める理由としては十分だと思う。

*1:今は亡きGATEWAY2000。