凄い
なんで今さらという感じだが『クイズ$ミリオネア』におけるみのもんたのあの無表情圧迫の芸は凄いと思う。新しい。解答者が出題者からのリアクション(返事)を最も欲している状況において徹底的にリアクションをシャットアウトすることで、解答者の問い(答えの正当性をめぐる問い)を彼/彼女自身の内部に差し戻し、葛藤の渦をそこに押し込め、圧縮し、限界まで増幅させる。正解か不正解か確率50%のサスペンス(宙吊り)、つまり自分では答えを出してしまったがゆえにそれ以上の答えはもう自分では出しようもない、この苦しみをみのはただ楽しむ。なぜそんな仕打ちが可能かというなら彼はそこに何も賭けていないからだ。何も自腹を切って賞金を出しているわけではない。正解だろうが不正解だろうがみのには全く何の関係もない。何かを決定する権利があるわけでもない。結果を伝えるという純粋なメディアでしかないのに、ただサスペンスの持続を思うさま楽しみ、気まぐれに打ち切るということを繰り返す権利をもっている。「正解!」だの「残念!」だのといったベタベタな外連の空虚さを、あの単なる無表情ははるかに凌駕している。にらめっこですらないのだ。何も、一切、賭けられていない。