ダンスの映像化

Damda! の映像報告会へ行ってきた。風変わりな趣きのあるロケーションや、常識外れの無茶苦茶なアイディアが真剣に実現されていて素晴らしかったのだが、しかしプレゼンと記録映像のクオリティは大いに問題ありだった。企画内容の説明があった方が絶対に楽しめるし、あと編集は、素人作業にしてもあまりにダメ。細かすぎる上にリズム感のないカット割りとか、いちいち音が切れちゃうのとか、節操のないシーン構成とか。お父さんが撮った子供の運動会じゃないんだから。しかしちょうどこの前日にNHK教育でやっていた勅使川原三郎も、お世辞にもプロの仕事とは言い難かった。まあ遠くから撮っているし、例によって撮影自体が難しそうな舞台ではあったのだが、何を撮っているつもりなのかよくわからないミディアムサイズのショット(しかもピンボケ)が頻出するし、空間がどうなっているのか混乱させられるカット割りに耐えられず、前半の佐東利穂子だけ見てやめてしまった。こういうのを見せられると、映像を作った人がダンスのどこを見ているのか(見ていないのか)が歴然とわかってしまって暗い気分になる。Damda! の例は、ダンスが見えてても映像が分かってないケース、NHKの例は、映像が作れてもダンスが見えてないケース。
どっちにしても、先日JCDNから出たDVD「踊りに行くぜ!!2001」を見て勉強してもらいたい。出来がすごくいい。特に撮影と編集(佐藤智弘、今野裕一)。単なる記録映像でもなければ、単なる映像作品でもない。あくまでも生の舞台を映像コンテンツとして加工し仕上げるというスタンスで、きちんとした映像文法(要するにアクションつなぎみたいな基本事項)によって見易く編集されていながら、しかもライヴの臨場感がしっかり保たれている。一回限りの舞台が、繰り返し鑑賞に堪えられる、というか、繰り返し見たくなる映像としてパッケージできている。まあここまでなら音楽のライヴヴィデオとかでは普通にやられてる水準の話かもしれないが、しかしこのDVDの場合、著作権がクリアできなかった部分の音楽がアフレコで新たに付けられていて、そこのクオリティがまた凄い。ほぼ全編(無音の部分以外は全て)アフレコになっているのが Abe"M"ARIA の『body ←→ unbodied』なのだが、画面の中の Abe"M"ARIA が踊っているのとは違う音楽が付けられているにもかかわらず、見事に映像+音(ソニマージュ)としてのダンスが成立してしまっている。これはちょっと感動的ですらある。
単なる記録映像だとどうしても退屈で、ライヴに対する「劣化コピー」というポジションになってしまう。かといってヴィデオダンスみたいなところまで行くと生の舞台との関係が薄くなる。そこをこのDVDのように、ライヴの臨場感と映像フォーマットの特性をうまく両立させたソフト制作が一般化すれば、やはりメディアには乗りにくいとされてきたダンスの流通も少しは変わってくるだろうし、さらに(メジャー系の映画制作みたいに)「二次利用」による収益を最初から見込んで舞台そのものの製作費に回すこともできるかもしれない。