上半期

木曜にスタダンを見に行ったらUさんと会ってMさんと三人で飲み。Uさんのイーストウッド萌えの話、ペドロ・コスタの話、『宇宙戦争』の話など。『宇宙戦争』、ぼくはこのところ流行しているこういう世界滅亡系のスペクタクルが苦手であるということを最近自覚した。ホラーは大好きだが漠然と世界が滅びる系は予告編とかですら精神的にしんどいし、見た後もずっと気が滅入る。昔初めて外国へ行った時、自分の全く知らない世界にも人間がいて、自分が全く知らないところでずっと昔から平凡な日々を平凡に過ごしていたのだという事実に、何ともいいようのない感動と衝撃を受けたのを今でも覚えていて、だから漠然と「世界」が滅びるような、無差別に人間が端から死んでいくような映像はウソでも見たくないし作ってほしくない。それもローランド・エメリッヒとかどうでも良さそうな人が撮っている映画ならまだしも、スピルバーグだったら見る価値があるのだろうと考えるとジレンマが生じてしまう。とにかくそんなひどいことはやめましょうよと願うばかり。あとICCの高嶺格と、『禁色』とピナ・バウシュと今度来るインバル・ピントの話。やはり今回のピナ・バウシュは、見に行かなかったという人と、見に行ったら良かったという人に大別される。ウェブ上では色々な意見があるが、直接会って話す中で、実際に見に行ってダメだったという人にはまだ出会っていない。さっきサイトを見たら、来年の来日公演は『カフェ・ミュラー』『春の祭典』と、先日初演された韓国ピースの予定だったが、韓国ピースから89年の『パレルモパレルモ』に変更になって、公演日数も一日減っていた。新作では集客が望めないと判断したのだろう。
ところで2005年も半分を過ぎたので上半期のダンスを振り返ってみると、今年はかなりの不作状況。割と見落としもあるはずだが記憶に残るものをリストアップしてみる。どういう意味で記憶に残るかという点で感覚的にカテゴライズすると、まず驚きはないがクラシカルな(安定した)良さという点で勅使川原三郎『風花』(2月、新国立劇場・中劇場)、黒沢美香『薔薇の人 ―めまい―』(3月、ギャラリー・ルデコ)、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『ネフェス』(6月、新宿文化センター)。独自の道を行っているというところで砂連尾理+寺田みさこ『loves me, or loves me not』(2月、シアタートラム)、珍しいキノコ舞踊団『家まで歩いてく。』(3月、彩の国さいたま芸術劇場・小ホール)、カンパニー マリー・シュイナール(3月、シアターコクーン)、ローザス『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』(4月、彩の国さいたま芸術劇場・大ホール)、Off Nibroll+ジョー・ロイド&シオオオタニ『public=un+public』(5月、BankART1929・1929ホール)。この中ではやはりOff Nibrollが頭抜けていると思う。作品性よりも「踊り」として忘れられないのが黒田育世『モニカ モニカ 〜マーチ編〜』(4月、森下スタジオ、「BATIK・トライアル」)、白井剛(5月、横浜赤レンガ倉庫1号館、「ダンス空間の拡張―その瞬間」)。ちょっと気になるところでは他に尹明希『ペヴェラーダ』(2月、青山円形劇場、「日韓ダンスコンタクトVol.2」)、アリアーネ・タルハイム/ノーラ・ショット 『オーバーランド(陸路)』(5月、東京芸術劇場・中ホール、「日独コンテンポラリー・ダンス・プロジェクト」)。あとはピンク(磯島未来、加藤若菜、須加めぐみ)が「これから日の出は誰にも教えない」(3月、シアタートラム)でやった題名なしの作品、KINKY『O what a happy title do I find』(5月、セッションハウス、「シアター21・フェス Step Up vol.8」)も可能性を感じた。しかしこうして羅列していってみても、突出して凄いと思えるのはやはり神村恵『脱出&カムバック』(4月、早稲田大学学生会館、「dancedoor vol.1」)で、色んな角度からみて文句なしに「2005年上半期の収穫」といえるのはこれ一本。あと個人的に衝撃だったのが江原朋子『審美』(2月、シアターX)。