いつどこで誰と何をしたか

世田谷パブリックシアターの客席で、アレッシオ・シルヴェストリンの振付の特徴はどこにあるか、振りの一つ一つが短く断片的、加速・減速に乏しく、力の入れ方が極度に均質であり、他方リズムは不規則で非人間的な呼吸(しかしやたらニュアンス濃く音楽的に踊る人がいると思ったら金森穣だった)、などと考えていたらまた地震が来て結構揺れた。その瞬間二つの意識が脳裡でせめぎ合い、一つは「また部屋の本の山が崩れる、特にちくま文庫が細く積もっているあの山がヤバい、面倒くさい、あと電車が止まったら帰れなくなる」というようなことで、もう一つは不謹慎ながら「この揺れでダンサーがよろめくのが見たい、一瞬でいいからよろメケ!」というようなことだった。結局地震はあまり大きくもなく、ダンサーはよろめかなかったし本も崩れてなかった。目の前で人が踊っているとはいえ、いとも簡単に人は「今ここ」を離脱してしまえるのだなと妙に感動した。黒田育世は「衰弱する金森穣」を見せてくれた。常識外れの疲労となけなしのガッツ……この一事をもって良しとしたい。10人ほどで飲んで終電。