僧侶

昨日古本でゲットした山田一平『ダンサー』('92、太田出版)[amazon]を読んでしまう。面白くて止まらず、格好の逃避になる。山田一平とはいうまでもなく北方舞踏派のビショップ山田。69年に土方と出会って以降の、特にキャバレー関係のことが詳しく書いてある*1気になった箇所を抜書きしておく。
具体。氏〔=土方巽〕の創作上の、また普段の信条である。氏は常に具体的なモノ、またコトでしかすべてを捉えなかったようだ。それは他人にわかり得ないコトでもモノでも一向に構わなかった。純粋なおしゃべり。本人しかわからない意味を大事にした。が、これは思うに、本来あるべき個人としての人間存在の本質ではなかろうか。そしてこうした最小単位として人間は存在し、わずかに親、兄弟といった血縁がそれらを拡大した唯一の関係ではないだろうか。(6頁)
「相談はやめれ」。〔…〕「デタラメでいい」。つまり、真に勝手気ままでよい。他人、観客、世間など関係なくてよいということである。個人の勝手なおしゃべりでよいというわけだ。(103頁)
土方巽はなぜ革命家であったか。それは、ダンス、踊り、舞踊のなかにあって、誰しもが気づかなかった、最も自身の身近にあり、また実は遠い、肉体というそのものをモチーフ化しテーゼした点にあると私は思っている。〔…〕「脳ミソも肉体だ」*2。/また肉体の持つ普通のもの。性。本能(暴力性)。死。病気などの状態にも焦点をあてた。言うなら普通のことをしたまでだが、それらはそれまでの舞踊(ダンス)の範疇にはなかったものであり、より新鮮度と衝撃をもったのは推測に易い。(8頁)
石井満隆のことを書いた件は面白い。石井はあらゆる手段で猫を虐待して楽しんでいた。)人間、退屈になると何をしでかすかわからないものである。(141頁)

*1:恐怖奇形人間』の撮影のエピソードの数々に興奮していたら石井輝男が死んだ。『恐怖奇形人間』も『網走番外地』もきちんと見たことないが『黒線地帯』や『黄線地帯』『セクシー地帯』は好きだった。確か『黄線地帯』での天知茂のラストが最高におかしかった。去年PASでスーザン・ソンタグの話をしたらこの人も死んだ。次は誰か。

*2:土方の発言として引かれているようだがイヴォンヌ・レイナーも"Mind is a Muscle"と言った。