最高

書き過ぎた原稿のゲラからどんどん文字を削って送信して亀有にダッシュして駅から延命寺まで歩く。前に一度行ったことがあるので大丈夫だろうと思っていたがやっぱり覚束なくて途中のガソリンスタンドで道を聞いた。それにしても亀有なんかは歩いていると色々、何とも懐かしい匂いが漂ってくる。ぼくの生まれは北区なので別にこの辺りではないのだが、何だかわからないホッとする匂い(というかリアルタイムではある程度何だかわかっていたはずだが今はもう匂いのニュアンスくらいまでしか思い出せない)に次々ぶつかる。イメージ的には、しょぼくれた洋品店とか電器店、演歌のカセットを売っているレコード屋、チェーンじゃない飲食店・喫茶店、畳屋、雑誌でもっている小さい本屋(NHKの雑誌『ステラ』のポスター)など。気取りのない生活感、人懐こさとガサツさの過不足ない一致。商店街にはコンビニがなく、路地をのぞくと遠くに辛うじて見えたりした。
延命寺へはid:crosstalkさんのオススメに従って花上直人を見に行ったのだが、直前になって指輪ホテルとのジョイントも決まっていた。仮設テントに蚊取り線香完備。昨日井の頭公園で初めてお話したばかりのSさんにまたお会いする。まず指輪ホテルがすごく楽しかった。今までも何度か見ているが今日のは絶妙に力の抜けたパフォーマンスで、こういう軽やかな姿勢こそ本当に社会とかを批評できるんではないかと思う。そして初めて見た花上直人が最高。「土方巽の直弟子」といわれているが、とにかくデタラメな芸の連発でしかも奥が深い。銀河の話と排泄物の話がイコールで結ばれ、「重力が愛。万有引力が愛。」とか、新聞を引きちぎって投げつつ即興で「ウンコ選挙、日本ウンコ」とか思い付きながら口走る。「舞踏」とか「アングラ」とかの括りが出来上がってしまう以前の初期衝動に触れてしまったような、エネルギッシュで「バカ」で「テキトー」で軽やかで、嬉しくなってしまった。これこそダンスではないか。土方の「命がけの馬鹿馬鹿しさ」という言葉を思い出した。