コロポックリ

家族旅行で初めて北海道へ行ってきた。小樽、札幌、富良野支笏湖。ぼくにとって北海道のイメージといえば、神戸=『ポートピア連続殺人事件』に続き、やはり『オホーツクに消ゆ』で、何かあのポカーンと空間が抜けたような空虚な無感動な情緒というか、そういうものを街並の中に見出したりしていた。そもそも動機が自発的なものじゃないので終始受け身になりがちだったが、支笏湖の土産物屋でアイヌ口琴ムックリを買ったら*1、店内の壁に古い古い写真が貼ってあって、熊を彫っている老婆の口が何だか大変な口裂け女みたいなメイクになっているのを見たりして、お店の人にそれがメイクではなく「刺青」で既婚女性を示しているのだとか聞いたら好奇心がドッと湧いてきた。モンゴルっぽい酋長の隣にスラヴっぽい若妻が並んでいた。そして帰宅する数時間前の時点ですでに、テッサ=モーリス・鈴木『辺境から眺める』('00、みすず書房)[amazon]が一体どこの棚に積読になっているのかははっきり脳裡に浮かんでいたのだった。
それにしても出発前夜に徹夜して何とか原稿を二本仕上げたとはいえ、このタイミングで三日間もロスしてしまったのは痛く、あと一週間で全部準備しなくてはならないなんてもはや現実味が乏しい。他人事のようだ。いや自分の事を他人事のように淡々とこなしていければいいのだが。

*1:練習しまくって、それっぽい音が出せるようになった。