Grupo Corpo

BAMのネクスト・ウェーヴ・フェスに行く。以前から噂に聞いていたがブラジルのグルーポ・コルポは面白かった*1。一本目は社交ダンス、二本目は泥臭いファンキーな踊りをベースに、どっちも恐ろしく複雑にひねってあるが、いずれにしても頭でっかちな形式の操作など全く素通りして、ポピュラー・カルチャーとしての「ダンス」を相手にしながら、(ただ動いているのではなくて)踊っている。NYタイムズのジョン・ロックウェルはグルーポ・コルポのダンスが「楽しい fun」ということを、どちらかというと取るに足らないこととして(二番目の作品のテーマとされている、宇宙と人の存在を巡るいささか形而上学的な思弁がどう表現されているのかは不明瞭だったが、でもまあ楽しかった、観客も喜んでた、というノリで)、要するに「浅い」というようなニュアンスで、ちょっと小馬鹿にする口調で書いていたが、実はそこにこそ真にダンス的な厚みがあるのだということを、この、音楽批評家なのにアンナ・キッセルゴフの後釜に抜擢され多くの勘違いと見当外れと知ったかぶりで総スカンを食っているらしい可哀相なNYタイムズの主幹ダンス批評家には気づいてもらいたい。いったいこのダンスの何が、なぜ「楽しい」のか、そして「楽しくない」ダンスには何が欠けているのかを考えようとしてみれば、この「楽しさ」は難解だしむしろ深遠であって少しも浅くないということはすぐにわかると思う。

*1:若いグループかと思っていたら30年も前からあった。