木曜はBAMでサシャ・ヴァルツの『Impromptus』を見る。正直よくわからない作品だった。動きに対するコンセプトが最後までつかめなかった。会場でSさんとXに会う。ポスト・パフォーマンス・トークがあったが、ホストの批評家の人は例の如く美術と音楽と制作プロセスの話しかしない。ダンスの話をしない。観客からの質問も、自分が勝手に連想した映画との関係を聞いて困らせたり、日本と同じ。
今日は電車で北へ向かいニューヨーク州立大学パーチェス・カレッジへ行って、シェン・ウェイを見る。グランティーのK、J、Y、M、初対面Cフロム・香港とともに*1。ACCのRとその夫人に駅から車で運んで頂いた。一昨年ADFで見た『春の祭典』の後どうなっているかが見たかったのだが、プログラムはまた同じ作品と、さらに前に作られた『Folding』。しかし『春の祭典』のムーヴメントは改めて見ても本当に凄すぎる。前に見た時から振付に手が入っているのか自分の記憶が不確かなのかわからないが、京劇の歩き方だけでなく剣舞の動きとか細かいジェスチャーとか人形振りみたいなアーティキュレーションとかが思っていたよりたくさん入っていて、そこから独自のヴォキャブラリーが立ち上がっているのがよく分かった。中華圏の皆がこれを見てどう思うか興味があって聞いてみたが「ジェスチャーが元の意味から切り離されて使われている」という以外は、これといって変わった感想は出て来なかった。シェン・ウェイは欧米を中心に大人気であちこちから招かれ委嘱を受けたりしていて、ADFのみならずリンカーン・センター・フェスにも毎年出ているようだが、ダンスに興味のないお金持ちに単なる「中国人」として消費されてしまわないことを祈る。『Folding』は初めて見たが、どうしようもない山海塾みたいで、こういうのを喜ぶ人たちに勘違いさせられると危ない。
ところでこの日は『春の祭典』開始後しばらく経ったところで火災警報。音だけでなく場内にストロボが光る。ダンサーはしばらく踊っていたが、やがて音楽が止まり幕が降りる。アナウンスもなく全員建物の外へ避難、後に再開。最初の方だけでも二回見られると思っていたら、途中からやり直していて根性が無い*2

*1:国籍はバラバラなのにぼく以外は全員中国語を話す。

*2:以前BAMでローザスが公演をした時、踊りが始まってもなかなか客電が落ちないトラブルがあって、そしたら客席後方からドゥ・ケースマイケルが舞台の前まで走って出てきてストップさせやり直しさせた、というカッコいい話を聞いたことがある。