新聞の訃報欄は必ず見てしまうという人は案外多いが、あまり気にして見ていると単調で、飽きて見なくなってしまったりする。それよりも、この世で最も好きなニュースは「新種の生物が発見された」という知らせで、時たまこれに行き当たるたび心の底から戦慄の震えが来る。もちろんそんな見たこともないような姿の生物がポンポン見つかるわけではなく、たいていは専門家にしかわからないような、微妙な、地味な特徴しかない「新種」なのだが、それでもやはり既存の知識の中に収まらない種族との出会い、というよりむしろそれを今まで知らずに我々は生きて来たという事実が、他にも我々の知らないところで未知の生物が生きているのだと想像させ、何とも陰鬱な気分にさせられる。少し前に、確かカリフォルニア沖で、深海のクジラの死骸の背骨の中に住むゴカイの仲間が見つかったと聞いた時など、血の気が失せながら猛烈に興奮した。そんな空間がこの世にあるなんて考えたこともなかった。大事故や大災害などといった「死」のニュースよりも、こうした「過剰な生」のニュースの方がはるかに重大で、恐ろしいことのように思える。