ハンガリーから来ているダンサーのEが「何か舞台が見たい」というので、今週のリストを作ってあげたのだが、結局ぼくの土曜の予定に丸ごと乗っかることになり、スズナリでペニノを見てから、ブリックワンで「ダンスシード」を見るというマニアックなプラン。まずはIさんと三人で待ち合わせてスズナリ、内容的には相変わらずだが、冒頭のマメ山田の身体でもって観客の遠近感を狂わす仕掛けとか、レントゲン写真用のシャーカステンがパラパラパラと点灯するリズムと音楽のシンクロとか、光るものは色々あり、あとジャズのトリオが普通に良かった。Eはラース・フォン・トリアーの『キングダム』をすぐ連想したみたいだが、それよりマメ山田がいつ「飛び込む」のか期待してたと言っていて、実際に「飛び出して」来た瞬間に「飛び込む」方が面白いのにと思っていたぼくは軽く負けた気がした。Eの従兄弟のD(東大に留学してボディビルをやっている)が来て、なぜか回転寿司に行くはめになり、その後Iさんが知っている超古典的なジャズ喫茶に入り、ぼくはニホンザルが堂々と入店して来るのを一瞬目撃したのだが他の三人に知らせた時にはもういなくなっていた。店主のペットらしく、レジの上には「中型のさる」用の許可証が貼ってあった。電車で移動中にIさんとDと別れ、団子坂を上がってブリックワン。日本の今の典型的なダンスを見ようと思ったらやはり吉祥寺とアゴラに行くべきだったのだが、出来上がった舞台を見るのではなく、作り手に対してある種の「共感」を抱きながらこういうのを見るのも悪くはないかなと思った。個人的には二番手の梅崎礼の、背伸びしない作り方が良かった。唐突に平井堅がかかった時、最初ゲンナリしたのだが、徐々に何か異様な迫力をもって響いてきて、これって蜷川幸雄における森進一みたいなものだろうかとすら思った。自分の好きな曲を好きだからという理由だけで流して踊って少しもはばからない、その図太さに何か空恐ろしいものを感じたのだった(蜷川幸雄がそうだということではない)。Eは、他の国の人だったら「こんな狭いところで踊れない」とか「照明が足りない」とかつべこべ注文を付けそうだけど、日本ではすごく小さい空間でも真剣にダンスをやっているのは見習いたいと言っていた。あと、この日の作品は西洋のクラシック音楽を使っているのが多かったのだが、ハンガリーではノイズが流行っているという。日本はどうなのかと聞くので、そんな傾向とかってあまり意味がないんじゃないか、などとは答えずに、ノイズは「シリアス」な雰囲気になってしまうので、東京ではちょっと古臭い感じがする、どちらかというとポップ・ミュージックを使うのが流行っている気がする、と答えた。IさんKさん、あと「レヴュアー」のAさんIさんDさん、出演者の方たちともちょっと話して帰る。