火曜、軽く風邪をひいてしまい、ヨロヨロと紀尾井ホールへ行ったら意外なところでKさんに会った。「<東京の夏>音楽祭」の、小笠原とパラオの歌と踊り。パラオの踊りも良かったが、何といっても大平京子さんの歌が泣けた。小笠原は1830年にハワイなどからの移民30人が入植するまでは無人島で、19世紀末に日本の領土になった。大平さんはこの最初の入植者の曾孫なので、もとの名前はイーデス・ワシントンさんというのだが、創氏改名で(「電報一本で」)日本の名前に変えられた。見た目はどちらかというとむしろ日本人っぽいのだが南の人っぽくもあって、日本語も当然ペラペラである。何だか、自分の知らない日本のエッジというか、クレオール的な人や文化の流れ、歴史を目の当たりにして、深いところでカルチャーショックを受けた。パラオはツアーなんかで簡単に行けるが、小笠原には今も飛行機は飛んでないので、船に25時間くらい乗らないと行けない。「距離」というか、「空間」って決して一義的に定まったものではない。
水曜、神楽坂で手塚夏子を見る。スズキクリの足の運びから漏れる音の「純度」が凄くて、さらに本格的に「踊る」手塚の動きが圧巻だった。パントマイムなんだけど意味が同定されないまま崩れて滑って逃げて行く。いくつもの「顔」があちこちから迸り出てくる。動きも、音も、声も、意味も、底の根っこの方からいちいち立ち上がってくるので、「う〜み〜は〜ひろい〜な〜」と日本語の歌が始まった時には、鈍い衝撃が走った。「ジャパン」が生起したような気がした。その後、Sさんとサシで少し飲んで、打ち上げに混ざる。黒沢美香&ダンサーズがヌルくなってないかという問題で、綱島の温泉の時からしてそうだったというところでも思いがけずSさんと見解が一致。特に今回「ダンス☆ショー」は低調だった。ぼくは2004年の夏の麻布die pratzeから後しばらく見てなかったのだけど、温泉の時に何だか「コミュニティ・ダンス」っぽく感じてしまい、気にかかった。前はもっと個々のダンサーがシヴィアに攻めて裏切り合っていた。
木曜、学生の成績を付け終え、あとはずっと仲里効『オキナワ、イメージの縁(エッジ)』('07、未来社)[amazon]を読む。ノーマ・フィールド『天皇の逝く国で』('94、みすず書房)[amazon]も読む。刊行当時から知っていた本だがようやく読むタイミングが来た。本は、ずっとそこにあるから良いと思う。今月のタイを皮切りに今年後半のアジア方面の動きが活発化しつつある。想像以上に広がって繋がって行っている。Gさんの行動力には頭が下がる。夜はAとネットで対談。