帰国早々、徹夜で沖縄シンポジウムの準備をして、昼の飛行機で羽田→那覇。ぼくは三月以来二度目、後藤さんは初。いきなり暑い。さすがにジャカルタほどではないにしても初夏か初秋くらいの陽気。モノレール(ゆいレール)で数駅移動して、住宅街の中にある静かな民宿へ。ここ数日、夏日で、海にも入れるらしい。荷物を置き、半袖に着替えて美術館へ。今日はオープン稽古場というのを夕方からやっている。ピチェ・クランチェンに再会。美術館の前田さん翁長さん、ダンスボックスの大谷さん横堀さんはじめ、皆さんとご挨拶。夕食を挟んで、最初の通しを見る。夏の試作からまたガラッと変わっていたが、ぼくが今まで見たピチェ作品の中で最も作品として充実したものになっているように思った。つまりタイとか、タイの古典舞踊とかいったものについての作品ではなく、さらにはそういったものへのレファレンスも明示的ではなく、それでいて要所要所に特殊な表現が使われている。こうして、欧米にはないアジア特有の技術や考え方が、「アジア」の枠組を離れ、外に開かれていけば、画期的なことだと思う(コンタクトインプロだって合気道がなかったら生まれなかった)。明日以降のトークセッションの打ち合わせ。最近ぼくはこうやって話をする機会を得る度に、日頃の考えをまとめて形にする作業を繰り返していて、先週はついにというか何というかインドネシアの若手振付家たちとジャドソンを出会わせるということをしてしまったが、今回は「身体」と「ネイション」(ないし共同体)を構造的に関連付けるための理論的枠組を提示する。身体やダンスをめぐる想像力と、共同体をめぐるそれとは絡んでいるのではないかという仮説。すぐに翁長さんから戦後の沖縄舞踊の変遷についての面白い話が出て、タイ語通訳の日向さんからもタイの政体についての重要な指摘が出るなど、打ち合わせの段階で早くも議論が回転し始めたから、仮説としては成功だろうという手応えが得られた。初日顔合わせということもあり宿近くの居酒屋で乾杯、夜半過ぎまで飲み、数日ぶり(数十時間ぶり)にまともな睡眠にありつく。