月曜は一般向けの公開講座、水曜はゲスト講師の日本舞踊家・花柳榮輔先生のアシストで、今週は休みが一日もない。

公開講座は一年生向けの授業でいつもやっている持ちネタ「ダンスと人形」を圧縮して話した。ジャワの男踊り「ガンビール・アノム」、井上流の人形振り、コッペリアジェームズ・ブラウンのロボットダンス、タイの「コーン」、そして究極はビルマの「ヨウッテー・ポエー」。特に今回は『井上八千代芸話』で四世が語っている人形振りについての考察を、映像の中で具体的に示すことをトライしてみた。井上流の場合、人形的な要素は「八百屋お七」のようにあからさまなものではなく、振りの中に霜降り状に含まれているので、重箱の隅をつつくような話にならざるを得ない。立った姿勢から軽く跳ねて一気に膝で着地しちゃうのとかは派手で明快だけど、その同じ即物的な落下運動が、立膝でしゃがんでいる時の反対の足の浮かせた踵をストンと落とすところとかにも現れている。これがヨウッテー・ポエーになると、全身が床にクシャッと落ちた後そのままスッと起き上がるところまでいく。油断していると本当に糸で操られているのだと無意識に錯覚して、何も不思議に思わなかったりさえする。この分野ではビルマのが圧倒的に凄い。だいたい、何度も同じ話をするのは苦痛だと思っていたけど、手直ししたり補強したりして厚みが出て来た。楽しんでもらえたみたいで、反応が良かった。(この水準の講義が毎回できるぐらいになりたい。)

今日の花柳先生の授業も、映像なのにちょっとした拍手が起こったり、挙手で質問してくれる人も結構いて、盛り上がった。講義の後もいろいろ有意義なお話が聞けた。特に踊りのこと、体のことでディープに話せるのは本当に嬉しい。稽古にヴィデオカメラを使うようになると踊りの質がどう変わって来るのか、とかはいつか研究テーマにしてみたい。

それにしても日本舞踊って見ていて自分もやってみたくなるよなと思った。バレエなどのような敷居の高さがない。例えば一番好きなのはヨコワケでポマードべっとりの中年男性とかの素踊りなのだけど、それは、その人の日常の顔みたいなものが同時に見えるからだと思う。普通の人のままで、良い踊りができたら(しかも別に「普通さ」を誇張しないで、普通の意味で良い踊りができたら)、素晴らしい。歌舞伎は別として、日本舞踊はそういう踊りかも知れないと思った。