IDF二日目の本番は若手三組。いくら超満員とはいえ、定時より5分前に開演なんていうケースは聞いたことがない。インドネシアの二作品の後、ゴンゾがトリ。ドラムの姫野さやかはどこから出てくるのかと思っていると、いきなり背景幕の向こう側に巨大なシルエットで現れた。まるでヒンドゥーの鬼神が暴れているみたいな、この世のものならぬ存在感の演出は見事だった。ゴンゾを見る観客のテンションというのは、いわゆる「舞台」を見ている時のように冷静なものではありえなくて、むしろスポーツの試合を見ている時のように、一挙手一投足に鋭く反応してしまうし、常にあちこちに注意を配って状況を把握し、分析しながら見ることになる。だから何か印象的な瞬間だとか「ファインプレー」だとか、そういうものはむしろ付随物に過ぎなくて、フレームによって区切られた時間(=「試合」の全体)を丸ごとスリリングなものとして共有できる。パンチなどがヒットする度に客席から声が上がって、異様に盛り上がった上に、その緊張感がいわゆる「ダンス」の上演におけるそれといかにかけ離れているかということが多くの人にとって印象的だったようだ。ベルギーの振付家のアルコ・レンツは「すごくコントロヴァーシャルだ。色んなことを考えさせられるパフォーマンスだ」と興奮して話してくれた。打上げの時に聞いた話では今回の出演を機に、かなり大がかりな欧州ツアーが決まりそうだという。ゴンゾはわりと美術系のイヴェントによく出ていて、ダンスのフェスにはあまり出ていないから、新しいブレイクになるかも知れない。IETMの関係でヨーロッパのプロデューサーが多く来ていたのはラッキーだったが、インドネシアで上演したのにアジアではなくヨーロッパにばかり引っ張って行かれてしまうのはちょっと納得が行かないけれども。アジアのプロデューサーたちのネットワーキングがいかに重要かということを改めて思った。