午後から新幹線で大阪。泉州名物の「ガッチョ」という魚を食べてみる。唐揚げで、松葉おろしの状態(半身と半身が尾の部分でつながったV字)に、さらに背骨も残してある。たぶん初めて見た捌き方。あとで調べたら関東では「メゴチ」と呼んでいる魚だった。正式な和名はネズミゴチ。背骨があるので印象としては食感が主。
去年の暮れに早稲田で上演された知念正真の戯曲『人類館』の関係でいろいろ調べていたら、前に沖縄へ行った時に何となく買っておいた大城立裕の評論集『沖縄演劇の魅力』('90、沖縄タイムス社)[amazon]が実はかなり面白く、かつ重要であることを知る。1978年の演劇集団「創造」による『人類館』東京公演についての評では、

誰もがそれぞれのしかたで感動した。私は最後の舞台をうしろで立ち見した。そして、刻々いろいろの立場の人種に自分を置きかえて想像してみた。すると、同じ舞台がいろいろな印象にいろどられて見えるのであった。よい作品というべきだろう。(323頁)

と、サラッと書いてあるが本質を突いていると思った。知念の戯曲では、何らかの「われわれ」というものの視点が固定されていない。しかしそうすることで「立場」を無化するのではなく、見る者をいくつもの具体的な帰属先(アイデンティティ)へと絶えず押し返して、「何者でもなくある」ことを許さずに、政治的ボーダーを何度も何度もまたがせる。